椎間板変性症

 名古屋市守山区を拠点とした出張専門骨盤調整治療院、ふるさわ指圧治療院です。

 高齢者に好発する脊柱管狭窄症や変形性腰椎症等を発症するきっかけになるのが、椎間板の変性です。脊柱管狭窄症になると主に脚やお尻に強い痛みやしびれが出て、大変辛い症状に悩まされることになってしまいます。年齢を重ねるにつれて椎間板が変性するのは避けられないのですが、できるだけその進行を遅らせることは可能です。後述する項目に気をつけて生活することで、椎間板の変性を予防しましょう。

椎間板が変性すると・・・

椎間板変性とは?

 椎間板変性とは、椎間板が歳を重ねるごとに水分量が減って弾力性が低下し、硬くもろくなった状態を表します。さらに高齢になってくると、椎間板がだんだんと潰れて厚みが薄くなっていき、直径が大きくなっていきます。また外力によって容易に傷ついて亀裂が入るようになります。

椎間板変性症(腰椎椎間板症)とは?

 椎間板の変性が進行すると、外層の繊維輪に亀裂が入り、そこから最外層にしかなかった神経が内部に伸びていきます。また同様に、血管新生により血管が内部へと伸びていきます。これは傷ついた椎間板を修復するべく起こる現象であると推測されます。血管のない所では炎症は起きませんが、椎間板内部まで血管が伸びると、椎間板が損傷した部位で炎症が起こるようになります。これによって神経にも炎症が飛び火し、過敏になった神経はちょっとした刺激に対しても腰痛を発症するようになり、椎間板変性症(腰椎椎間板症)と診断されます。MRI検査では、正常な椎間板は白く映りますが、椎間板変性症になると黒く映ります。

椎間板は消耗品

 正常な椎間板の内部には神経や血管が存在しません。わずかに最外層にのみ神経と血管が存在します。そのため栄養分や酸素は上下の椎体内の毛細血管より漏れ出たものが、終板と言われる軟骨組織を通過して椎間板に届けられます。またこの最外層を流れる血管からも供給されます。しかしながら腰周りの筋肉が固くなって血流が悪くなると、椎間板への栄養供給が滞りがちになり、椎間板の変性が進行して負荷がかかることで亀裂が入りやすくなります。このように歳を重ねるごとに不可逆的に一方通行で次第に劣化していきますので、椎間板は消耗品であると言えます。

椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に移行する可能性も

 椎間板変性症が進行すると、やがて椎間板ヘルニアになる可能性があります。椎間板ヘルニアになると椎間板の変性が加速してしまいます。なぜなら椎間板ヘルニアになると、内部のクッションの役割をしている柔らかい髄核が漏れ出てしまうため、クッション性が低下し、衝撃を吸収できなくなってしまうからです。また一旦椎間板に亀裂が入ってしまうと修復されることはないので、傷口が開いたままの状態になってしまい、椎間板ヘルニアが何度となく再発することも珍しくありません。このように再発を繰り返すうちに、髄核の量が次第に減っていき、どんどん瑞々しさが失われていってしまいます。

 さらに高齢になってくると、椎間板が潰れて厚みが薄くなり、外側に広がって直径が大きくなっていきます。またそれに伴い椎体間を連結している靭帯が緩むため、椎体間の連結が不安定になりグラグラするようになります。そのためグラグラをなんとか安定化しようと、脊柱管の後方の黄色靭帯が分厚くなることで補強します。このように、脊柱管の前方からは椎間板が、後方からは黄色靭帯が出っ張ってくるため、脊髄の通り道である脊柱管が狭くなって脊柱管狭窄症を発症します。

椎間板変性を予防するために

  椎間板の変性を予防するために、できるだけ下記のことは控えるようにましょう。

  • 長時間座りっぱなしにならない。長時間座りっぱなしでいると腰が固まってしまい、腰周りの血流が悪くなってしまいます。また椎間板内圧は立っている姿勢よりも座っている姿勢の方が1.4倍高くなります。最低でも1時間に1回は立って腰回しをするなど軽めの運動して、腰の疲労をリカバリーさせましょう。
  • 腰を曲げて座らない。前傾で座った時の椎間板内圧は、姿勢良く座る時と比較して1.3倍高くなります。(1976年ナッケムソン氏の実験によると、椎間板内圧は、立位を100とすると、座位で140、座位+前傾で185となる。)
  • 高負荷スクワットなどの筋トレは、椎間板への負担がとても大きく、椎間板を痛める原因になります。スポーツ選手でどうしても筋力アップが必要ならばやむを得ませんが、そうでなければ高負荷スクワットは避けたいものです。
  • 腰を強く繰り返しひねる運動はできるだけ控えましょう。椎間板はひねりや曲げに弱い性質があります。椎間板変性が進行している人は、これ以上悪化させないように、ゴルフや野球など腰を強くひねる運動はなるべく控えた方がいいでしょう。
  • 喫煙は血管を収縮させ、血流を悪化させます。それにより椎間板への栄養分の供給が滞りがちになり、椎間板の変性が進行してしまうリスクがあります。
  • 過度な肥満は椎間板への負担が大きくなります。可能ならば少しでも減量して椎間板にかかる負担を軽減しましょう。

椎間板の炎症を抑えるには

 椎間板変性を原因とする腰痛は、炎症が起きている限り続くことになります。炎症が継続しているということは、椎間板に新たな亀裂が次々と発生していることが推測されます。結局はこの悪い流れを食い止めないと炎症が終わらないわけですから、そのためには椎間板にかかる負荷を減らしたり、椎間板に栄養分や酸素が十分に行き届くようにして、椎間板の変性を鈍化させなければなりません。

 骨盤調整により骨盤を整え、背骨の弯曲を改善することで椎間板への偏荷重を減少させ、椎間板の負担を軽減させることができます。また腰周りの筋肉が柔らかく弾力が出て血流が良くなるため、椎間板への栄養供給が円滑に行われるようになり、椎間板の変性を遅らせることができます。

 また1日10分程度の腰回し運動は、椎間板への適度な刺激となり、また固まった腰をほぐす効果があります。それにより腰周りの血流が良くなるのと、椎間板が繰り返し伸縮することによるポンプ作用により、隣り合う椎体から椎間板内への栄養分の供給を促進する効果が期待できます。ただし頑張り過ぎると椎間板の消耗につながってしまうので、くれぐれもやり過ぎないようにしましょう。

まとめ

 日々治療をしていると、本当に椎間板の大切さを身に染みて感じます。体の中心を走る大黒柱である背骨が壊れて痛みを発するようになれば、たちまち人間の行動は制限され、ただただ痛みに耐える毎日を過ごすことにもなりかねません。ですので、椎間板は消耗品ということを意識して生活をすることが大事です。そして過度に椎間板を消耗をしないように気をつけて生活をするべきです。特に一度でも椎間板ヘルニアになったことがある方は、自分自身の椎間板と会話をするかのように、いたわってあげてください。この生活習慣や動作は椎間板に負担がかかるだろうか?と常に気にしながら行動していれば、おのずと負担がかかる動作は回避することができます。

 ゴルフなどの体を強くひねる動作も椎間板にはとても負担がかかります。趣味を失うということは、生きがいを失うことにもつながり、私としても患者さんに強くやめた方がいいとは言いにくいものです。しかしながら、もし私自身が椎間板に問題があったとして、将来的に脊柱管狭窄症で苦しむ のと 今のゴルフの楽しみ を天秤にかけるとしたら、私なら迷わずゴルフは控えます。

 椎間板の変性を遅らせて、高齢者になっても質の良い椎間板をキープすることができれば、脊柱管狭窄症や変形性腰椎症などの腰のトラブルを未然に防げます。そうするとQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を低下させることなく、高齢者になっても活動的な生活を送ることができます。そのためにも、若いうちから椎間板を消耗品であることを意識して、高齢になっても若々しい椎間板をキープできるように努めていきましょう。